スーパーマーケットには水産加工品コーナーがあり、かまぼこやちくわ、さつま揚げなど、美味しそうな食べ物が陳列棚を彩っています。この水産加工品の豊富さは、日本が世界に誇る食文化の1つです。海にかこまれ水産物が豊富にとれる日本において発展してきた「水産加工」の歴史や加工品の種類などについてご紹介します。

水産加工とは?

海洋や河川、湖沼などからとれる魚介類や海藻類などの水産物。「水産加工」とは、それら水産物に手を加え、味や香り、色味などの嗜好性を高めたり、栄養価を高めたり、保存性を高めたりすることをいいます。また、上記のように加工された商品のことを「水産加工品」と呼びます。

水産加工の歴史

日本の水産加工の歴史は古く、縄文時代にはすでに塩を使った加工が行われていたと考えられています。飛鳥時代や奈良時代、鎌倉時代など朝廷が統治する時代が訪れると、収穫した農作物や水産物に加え、地域の特産として水産加工品も税として納められていたようです。海洋や河川、湖沼などの地域から内陸部に運べるほどに長期保存の技術が確立されていったのもこの時期だとみられています。また、江戸時代には鰹節の製法も確立されたほか、佃煮も生まれました。

水産加工品の種類

海にかこまれ海産物に恵まれた日本では水産加工技術が著しく発達し、現在はさまざまな水産加工品がつくられています。農林水産省の「令和3年水産加工統計調査結果」によると、令和3年(2021年)には、食用加工品として143万8686トン生産されました(焼・味付のりを除く)。加工品の主な種類としては、「ねり製品」「煮干し品」「冷凍食品」「塩蔵品」「塩干品」「節製品」が挙げられています。

水産加工の仕事

水産加工の仕事は、海産物を扱い、人の体内に入る食べ物をつくる仕事です。水産加工品の製法は、地域や企業によってそれぞれですが、衛生面と品質を特に厳しく管理しています。新鮮な素材を使うことからはじまり、加工途中の仕掛け品や完成品の検査、衛生面の徹底などを重ね、水産加工品をつくっています。

水産加工品ができるまで

水産加工品をつくる手順は、原料とする水産物や加工の種類、調理法などによってさまざまですが、一般的な手順は次の通りです。

最初に原料の調達です。漁獲や養殖、市場での仕入れなどで、原料となる水産物を調達します。次に洗浄で異物(汚れなど)を洗い流し、必要に応じて内臓などの不要な部分を取り除きます。その後、調味料などを用いて味付けし、釜に入れて加熱するなど調理します。調理が完了したら、運搬・保存しやすいように包装し、異物などが混入していないか、製品として問題ないかを手作業や機械などで検品すると完成です。出来上がった製品は、梱包して出荷します。

いろいろな水産加工品

海産物が豊富な日本では、いろいろな種類の水産加工品がつくられています。代表的なものを紹介します。

かまぼこ

かまぼこは、スケソウダラやオキギス、ムツ、イサキなどの白身魚のすり身でつくられます。すり身を焼く「焼きかまぼこ」、蒸す「蒸しかまぼこ」、揚げる「揚げかまぼこ」、ゆでる「はんぺん、なると」などがあり、スーパーマーケットなどで目にする板に乗ったかまぼこは「蒸し板かまぼこ」と呼びます。

板は、すり身の形状をくずれにくくする目的のほかに、蒸した後に出る余分な水分を吸収して品質と保存性を高めるという役割もあります。

主な食べ方は、包丁でカットして、そのまま醤油とワサビで食べる「板わさ」です。

わかめ・海苔

わかめの水産加工品として代表的なのが、わかめを乾燥して保存性を高めた「乾燥わかめ」です。乾燥わかめには、塩抜きした塩蔵わかめを細かく切った「カットわかめ」、生わかめをそのまま乾燥させた「素干しわかめ」、草木を燃やした灰をまぶして天日干した「灰干しわかめ」などがあります。

灰干しわかめは鳴門海峡に面した地域の特産品で、素干しわかめに比べて緑色が鮮やかで歯ごたえが良く、わかめ特有の香りが長持ちするのが特徴です。

海苔の水産加工品として代表的なのは、薄い板状に乾燥して保存性を高めた「乾し海苔」です。乾し海苔加工は、紙をすくのと同じような方法でつくられます。品質の劣化を防ぐために短時間で乾燥させなければならず、現在は手作業ですくよりも、工場の機械でつくられるのが一般的です。

干物

魚の干物は、生魚を開き、流水で血や内臓を洗い流した後、塩水や調味液に漬けてから干してつくります。干物にすることで保存性が高まるだけでなく、うま味が凝縮するのが特徴です。また、干物は塩水などに浸したときに、魚の表面近くの筋繊維が膨らみ筋繊維同士の隙間が狭くなります。その結果、焼いているときに水分が逃げづらくなり、ふっくらと焼き上がるという魅力もあります。

缶詰

海産物を缶に詰めて密封して高温加熱した缶詰は、保存性が非常に高いのが特徴です。生産時に工場で加熱処理されているため、開けてそのまま食べることができます。

日本では品質表示基準などの規格で殺菌工程を経ているものを「缶詰」と定めていますが、世界には、あえて殺菌をしない缶詰もあります。例えば、“世界一臭い缶詰”とも言われるスウェーデンの「シュールストレミング」は、ニシンの塩漬けを缶に入れた後、殺菌せずに発酵させた水産加工品です。

うに加工品

上記で紹介したのは加工の種類の一例であり、1種類の原料(水産物)から、さまざまな種類の水産加工品がつくられています。例えば鮮度が比較的落ちやすいとされる「うに」ひとつとっても、水産加工品の種類はさまざまです。

北三陸ファクトリーでは、新鮮な生うにに塩を振り、低温で寝かせて熟成させた「塩うに(びん詰)」、生うにをそのまま缶に入れて蒸した「蒸しうに(缶詰)」など、素材の美味しさを凝縮しつつ長期保存を可能にしたものに加えて、うにを水揚げ後すぐに蒸し上げ、発酵バターと混ぜて味付けした「UNI&岩手山バターSPREAD」豆乳をベースにつくった「うにフラン(西洋茶わん蒸し)」など、ユニークな製品が日々生み出されています。

未来に向けた、水産加工の取り組み

水産物を原料とする「水産加工」の世界においても、現在、「サステナビリティ(持続可能性)」に関する意識が高まっています。未来に向けた取り組みの一例を紹介します。

水産では珍しいトレーサビリティシステム

トレーサビリティとは、「原材料の調達から⽣産、そして消費または廃棄まで追跡できる状態にすること」です。トレーサビリティシステム(仕組み)を整備し、製造にかかわる各事業者が原材料や中間製品、製品を取り扱った際の記録を保存しておくことで、 製品に不良や不具合が発生した際にその問題を調べ、解決を図ることが可能になります。近年では製品の品質向上に加え、安全意識の⾼まりから重要度が増しており、⾷品の分野にも浸透しています。

水産の分野では、まだ一般的ではありませんが、持続可能な水産業を考える上でも、このトレーサビリティの重要性が高まっています。

北三陸ファクトリーの安心安全への取り組み

岩手県の沿岸最北端、北三陸・洋野町を拠点とする⽔産会社である北三陸ファクトリーも、水産のトレーサビリティに取り組む会社の1つです。同社は、消費者に安⼼安全な⽔産品を提供することを目的に、うに製品のトレーサビリティシステムを開発しました。製品に貼付されているQRコードを読み込むことによって、その製品が「いつ、どこで、誰によってつくられたのか」を知ることができます。

その他にも北三陸ファクトリーは、水産の未来に向けたサステナブルな事業も進めています。現在、海の砂漠化とも⾔われる「磯焼け」が大きな問題となっています。地球温暖化による自然環境の変化などさまざまな要因がありますが、その1つが、うになどが海藻を⾷べ尽くしてしまう「食害」だと考えられています。この磯焼けの進⾏を⽌めるため、全国でうにの駆除が推奨され、駆除されたうには痩せていて商品価値がないため、廃棄されています。

北三陸ファクトリーは、大切な水産資源を廃棄してしまっているこの現状に問題意識を持ち、磯焼けによるエサ不足で痩せたウニを廃棄するのではなく、海から回収し、上質な飼料を与えて実⼊りの良いうにに育てる仕組みを開発しました。その仕組みによって⽣産された美味しい養殖うには、「はぐくむうに®」ブランドとして2021年に試験販売を開始、2022年より販売を開始します。

まとめ

水産物に手を加え、味や保存性などを高める水産加工。その歴史は古く、先人たちのたゆまぬ努力によって受け継がれ、発展してきました。現在ではいろいろな種類の水産加工品がスーパーマーケットなどに並び、私たちは一年を通じて美味しい海産物を楽しむことができます。

北三陸ファクトリーでは、食の安心・安全を追求しながら日々技術研鑽に努め、水産業に取り組んでいます。その中で、岩手県洋野町で採れた新鮮な生うにに加えて、素材の良さを生かした「UNI&岩手産バターSPREAD」をはじめとした加工製品をつくり、販売しています。ご興味のある方は、是非オンラインストアをご覧ください。

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